株式会社 大和電業社

■会社概要
 1958年の創立以来、電気工事の技術集団として半世紀以上の歴史を重ね、人々の生活を支え続けてきた大和電業社。官公庁から民間まで手がけたプロジェクトは多岐に亘り、工事は企画から提案、設計、メンテナンスまで一括した受注を可能とする。さらに近年は高度な設計力と施工技術を強みに、石油コンビナートや廃水処理施設をはじめとする大型施設の建設・設備の工事も担い、産業界に不可欠な役割を果たすエンジニアリング事業も展開。未来に向けた挑戦を続けている。

■インタビュー
大分でイクボス宣言を行った企業を訪問し、宣言の経緯や職場づくりへの思い、今後の方針などについてインタビュー。代表取締役社長の大西康生さん、営業部 部長の丹羽宏成さん、営業部 設計積算課 主任の三島翔太さんに話を聞いた。

 

-会社として「イクボス」に取り組もうと考えたきっかけを教えてください。

大西 取り組みを始めたのは2年程前になります。理由としては男性の育休取得に政府が国を挙げて取り組むなど、現代社会の流れを率先して取り入れることで採用難の時代を乗り越え、若い人たちが住みたくなるまちに大分を変えていく必要があると考えたからです。また、私には娘がいるのですが、若い夫婦の子育てを間近で見守っていくなかで“これは会社としてのサポートが必要だな”と強く感じる場面が多くありました。私が過ごしてきた時代とは異なり、今は男性の育児参加がとても大切だと思います。
 

-宣言に伴い、導入した制度はありますか?

大西 まずはパパ育休ですよね。現在は取得期間が1週間前後となっていますが、今後はより長期の休暇を取得できるように頑張っていきたいと考えています。それから正式な発表はまだしていませんが、相談があればお子さんの送迎や通院など、さまざまな事情による時差出勤を可能とするフレックスタイム制にも対応するようになりました。在宅勤務の女性社員もいますよ。

 

丹羽 今年はパパ育休の取得率が90%。休みを取っていない社員が1人だけいますが、まだお子さんが生まれて1年に満たないため時期を考えている状況です。昨年はこちらから取得の声掛けをすることで制度への理解を求め、先駆者をつくることで社内の空気を変えていく作業が必要だったのですが、今は自ら申請する社員がほとんど。良い波がきているな、と嬉しく思います。

 

三島 私も今年2人目が生まれたことで初めてパパ育休を5日間取得しました! 1人目のときに貴重な新生児期の育児に関わることが出来なかった後悔があり、今回は奥さんとも話し合って絶対に休もうと決めていました。今はフレックスタイム制も利用していて、上の子の保育園の送迎のため、8時出社のところを8時10分にしてもらっています。この10分がなければ園には間に合わないので助かっています。

 

丹羽 自分も子どもが2人いるのでわかりますが、朝の10分は昼の1時間に値するくらいの大きな価値がありますよね。朝起きてから歯磨き、ごはん、着替え、靴を履いて玄関を出るまでずっと声を張りっぱなし(笑)。だから会社がごくわずかな朝の時間を許容してくれるだけで、子どもとの向き合い方にも余裕が生まれると思います。この2年間で始業時間を7時50分から8時に下げたのも大きな変化ですよね。

 

大西 もともと8時スタートでしたが、実際には7時50分から朝礼をしていました。これは建設業界に古くから続く習慣のようなものですが、そこもこれからの時代は変えていくべきだろうと考えまして。現場は難しいところもありますが、社内だけでも思い切ってルールを変えることにしました。

 

-マネジメントする立場として大変なところは?

大西 実際に有給をはじめとする社員の休みを増やし、なおかつ残業を減らしていこうという改革を進めるにはもちろん大変なことが多くあります。その上で業績を上げていかなくてはいけないわけですから。そこで弊社が課題解決のために進めているのが、業務の効率化を目指したDXの推進。そこには初期投資として多くの費用が発生しますが、それでもこの選択が間違いだと思ったことはありません。若い頃は“誰にも負けない努力をしてガムシャラに働き、立派な人生を送るんだ”と考えて過ごしてきました。そしてその価値観は今でも自分の中にあります。ですが誰にも負けない努力=長く働く、ではないと近頃は思えてきたんですよね。短い時間の中でいかに業務を消化させていくかという点にフォーカスし、生産性を上げていくのが私の努めだと思っています。ですから社内でも限られた時間の中でどう働いていくか?という問いかけは厳しく行っているつもりです。

 

丹羽 育休などの推進により社内に課題が生まれることは確かですが、私は業務の見直しができる良い機会だと思っています。私たちの会社は部署によっては属人化が進んでいて、三島さんが所属する積算部もそのひとつ。だけどその状態が続くと休暇中でも在宅での仕事や電話対応が発生してしまうため、真の休みとは言えないと思うんですよね。それに会社にとっても本来、業務の属人化はリスクのはず。長期休業や退職は育児に関わらず、さまざまな事情で突如発生するものです。そこに対応するためにも業務の平準化は必要だと思っています。組織として新しい宣言をする、制度を取り入れるときは何かを見直すタイミング。今回で言えば“イクボス”をスタンダードにしていく2年間だったように思います。

 

三島 パパ育休を取得する際は上司も部下も、部署のみんなが親身になってスケジュールの調整に協力してくれたのが嬉しかったです。そのおかげで休むことへの不安が軽くなりました。

-世代間の価値観の擦り合わせはどのようにしていますか? 

丹羽 それが特に意識して取り組んでいることはなくて。社長の雰囲気づくりが影響していると思いますが、上の世代の方も柔軟な考えを持っている人がほとんどです。弊社は平均年齢が35.9歳。主力メンバーも50代と若いため、“現代の価値観がスタンダード”という空気感はありますね。また、社員全員が採用に携わる“全社採用”という体制を整えており、例えばイベントがあった日には“○○の部署から今回は○名”というふうな方法をとっています。若い人と触れ合うことで彼らにどのような言葉が響くのかを知り、人材を確保する難しさを痛感することで考え方がいつの間にかアップデートされたのかもしれません。

 

-部下の方に対する声かけや、職場の雰囲気づくりで丹羽さんが心がけていることは?

丹羽 社員が仕事に向かう際、ご家族から気持ち良く送り出してもらえる職場とはどういう場所だろう?ということは常に考えています。例えばどうしようもなく残業が発生してしまった場合、そこを理解してもらう努力をするのは本人だけではなく会社にもあると思っていて。そのために時代に沿った制度を整えることはもちろん、育休を取得する際は“仕事として家庭に入ってほしい”、“奥さんのサポートじゃないよ、自分も子育ての当事者だよ”ということはなるべく発信するようにしています。

 

-今後の取り組みについて教えてください。

大西 社内DXを推進し、業務の効率化をさらに図っていきたいと思います。父親の育休取得は100%を目指し、ゆくゆくは1カ月程の長期で取得ができるような体制を整えることが目標です。希望者が申請しやすい雰囲気づくりにも一層取り組んでいこうと考えています。
 

<データ>
株式会社 大和電業社
大分市南春日町11番5号
tel. 097-545-2331
url. http://www.d-yamato.jp/
従業員数:62名
代表取締役社長 大西康生