会社概要
 1982年にオフィスコンピューターやオフィス向け機器・家具の販売を手掛ける『アトムス事務機』として創業。企業をはじめ医療機関、官公庁など幅広い顧客を相手に、現在は設計から納入までを手がけるオフィスプランニング事業を続けながら、Salesforce社やSmart HR社とのパートナー契約を結び、デジタルソリューションを提案するDX推進事業に軸足を移している。
 

「新しいことにチャレンジすることが好き」と語る社長の安部慎次さんは、子育てに限らずさまざまな事情をもつ社員たちがいることを考慮し、誰もが働きやすい環境をみごとに実現。その過程で時代に求められる価値を見いだし、新規事業にまで発展させた。子育てをしながら働くソリューション営業部の安部春奈さんと、総務部の若手社員・米田芽衣さんにも働き心地を伺った。

-イクボス宣言をしたきっかけを教えてください。


安部(慎) きっかけは2つあります。1つは、コロナ禍に突入して出社制限をすることになり、自宅でも働ける環境が必要になったことです。そのとき「今後も何が起きるか分からない時代。社員それぞれにもいろんなバックグラウンドがあるので、コロナ禍に限らずいつでも、そして誰でもテレワークに対応できるよう働き方を変えて行かなければ」と思ったんです。また、今後会社が成長していくにあたっては人材の確保が必要。働きたいと思ってもらえる魅力的な会社であるには、家族を大切にできる社風を育てなければならないと考えたのが、2つ目のきっかけです。

 

-宣言をした後、社内にどんな変化がありましたか?
 

安部(慎) 当社の場合、宣言をする以前に大きな改革をしたんです。そもそもは、私が社長に就任した2017年頃から新規事業の立ち上げに取り組んできました。従来のオフィスプランニング事業に加え、サブスクリプション型のビジネスに挑戦して経営の安定化を目指したかったからです。

 そんな中、前述した「テレワーク環境の整備」と「人材の確保」という課題にも直面し、まずは自社の働き方改革に向けてさまざまなITツールを導入することに。特に、Salesforceという顧客管理ソフトを使い始めてからは社員全員がいつ、どこからでも全商談の進捗や関連資料を共有できるようになり、有休の申請など決裁が必要な書類もデジタル申請が可能になりました。仕事の属人化が解消され、コミュニケーションも取りやすくなったと感じています。システムにアクセスすれば必要な情報が把握できるため、進捗確認のための会議に費やす時間を営業活動に充てられるようにもなりました。

 当然、テレワークも可能になったのでお子さんが病気になった社員には自宅作業をしてもらったり、急きょ担当者が休んでも特別な引き継ぎをすることなく別の誰かがフォローできたり…と、業務の効率化が大幅に加速。結果的に残業はほぼなくなり、かつては長時間勤務をいとわなかった50代以上の社員たちも定時でサクッと帰宅するようになっています。休暇も全員がしっかりと取得している状況で、“推し活”に励むなど各々のプライベートを楽しんでくれているようです。

 この実体験をもとに、当社は2023年の春、大分県内にある企業として初めてSalesforce社とコンサルティングパートナー契約を結びました。自社でその利用価値を体感したことが新規事業に発展し、商品に自信をもってお客さまにおすすめできることが大きな強みとなっています。
 

-社員のおふたりは、今の働き心地をどのように感じていますか?


安部(春) 現在はオフィスの図面を描く仕事を担当していますが、とても働きやすいです。小学3年生の子どもを育てながらフルタイムで勤務しています。実は、子どもが小学生になるとき、育成クラブが子どもを預かってくれる時間が保育園よりも短いので「仕事を続けていけないのではないか?」という不安があったんです。でも、会社にSalesforceが導入されたおかげで「この日は絶対に休めない」というプレッシャーがなく、いざとなったらテレワークに切り替えることもできるので、安心して働き続けることができています。例えば、夏休みは子どもが通う育成クラブが開く時間に合わせて、有休を活用し始業を1時間遅らせてもらいました。昨年も、子どもがインフルエンザにかかった時にはテレワークで対応できました。そういったことを周囲に相談しやすい雰囲気もあります。今はまだ子育て中の社員がほとんどいないので、私が良い前例になれたらと思います。

 

米田 私はもともと体が弱く、体調を崩してしまって前職を辞め、最初は派遣社員としてこの会社に入りました。最初は「次はどんな仕事ならやっていけるだろうか?」と考えながら働いていたのですが、アトムスでの仕事に慣れてきて、働きやすさも感じていたある日、社長から「正社員になりませんか」と声をかけていただき就職することに。残業がなく、休日もしっかりと休める環境が体調を取り戻すために最適で、実際、体調が安定してきたことから、プライベートでずっと行けていなかった趣味の競技カルタの練習や試合にも参加できるようになりました。今は、総務部で受発注や見積などの作成を担当しています。入社2年目ですが、過去のデータがシステムにしっかりと、しかも細かく残っているため、それを参考にしながらスムーズに作業ができています。
 

-今後、さらにどんな職場を実現したいですか?


安部(慎) 当社は、「いつも明るくご機嫌に」「寛容の心を持ち続けよう」「困っている人に手を差し伸べよう」「多様性を認め個性を尊重しよう」「いつ何時の挑戦」「決して諦めない」「ユーモアを忘れずに」という7つのバリューを大切にしています。デジタル技術を活用したDX推進事業に取り組んでいる企業ですが、そのイメージとは真逆の言葉が並んでいると思いませんか? AIの普及によって機械に任せられることが多くなってきましたが、だとしたら“不可能なことにチャレンジしようと思うこと”こそ人間の価値ではないでしょうか。機械はできなくなったら止まってしまいますが、我々は諦めずにチャレンジすることができます。その姿勢が周りの人を動かすこともあるのではないかと思うのです。

 そんな私たちの会社には最近、20代の若手と50代以降のベテランが増えてきたので、子育てや介護に直面する世代が増えてくるのはこれから。イクボス宣言に掲げた“ライフスタイルに合わせた多様で柔軟な働き方”に、もっと自由度をもたせたいと考えています。そのためにも「今までこうだったからできません」と言うのではなく、「こういう変わり方をするので対応していきましょう」と言うように思考を変えています。

 また、最近はインターンシップの大学生も働きに来てくれているのですが、その子たちに社員になってもらうため、あるいは大分県に残ってもらうためには、働きやすい環境に加えて給料も高くしていく必要があると感じています。“人生を楽しむ人を応援します”と宣言していますが、それには会社の業績をもっと上げなければ。理想は「休日なのでハワイに行ってきます」と言うような社員が増えること! まずは新規事業を軌道に乗せ、世界に肩を並べられるサービスを提供して利益を生み、高水準の生活を叶えられる企業になりたいです。そして、子どもが育つ世の中にも貢献したいですね。
 

<データ>
株式会社アトムス
大分県大分市大字生石44番地の11
TEL097-537-4531
url. http://www.atoms.co.jp/
従業員数:20名
代表取締役社長 安部慎次