思いがけず偶然に。 図書館は未知なる本との出会いが待つ場所。

 大分市出身の建築家・磯崎新氏の設計により1995年に開館して以来、多くの県民に親しまれている『大分県立図書館』。今回はそんな知の宝庫の2階にある「子ども室」を訪ね、児童サービスを担当する3人に、オススメの児童書と、県立図書館の過ごし方を聞きました。

児童書だけで蔵書、約17万冊!!

 0歳児から中学生までを対象にした児童書に絵本、紙芝居、外国語図書、図鑑や辞典をはじめとする学習のための本など、数多くの本を所蔵する「子ども室」。こちらのコーナーは図書館の2階にあり、小さなこどもでも手の届きやすい書棚には、大人でもワクワクするような本がたくさん並んでいます。室内の一角に用意されたマットコーナーでは、赤ちゃんへの読み聞かせを行うママやパパの姿もちらほら
 さらに妊娠出産から中学生までの子育てに関する本を集めた「子育て情報コーナー」が、同じフロアに設けられているのも嬉しいポイント。階段の行き来をすることなく、絵本と育児書を探すことができます。
 

こどもたちがリラックスして本が読めるマットコーナー
中学生までの子育てに関する情報が得られるのは嬉しい!

年代別おすすめの児童書10選  未就学児・小学校低学年向けの本とは?

 ではそろそろ、おすすめの本の紹介へ…。

 個性豊かな本が並ぶゆえ、「こどもにどれを読んであげたらいいの?」と迷うことはありませんか?

 そんなときはぜひ、以下の絵本や児童書を探してみてください。まずは未就学児向けのものから紹介してもらいました。
 

(未就学児向け)
『がたんごとんがたんごとん』
安西水丸/作 福音館書店/発行 1987年

『もこもこもこ』
谷川俊太郎/作 元永定正/絵 文研出版/発行 1977年

『くだもの』
平山和子/作 福音館書店/発行 1981年

『しろくまちゃんのほっとけーき』
森比左志 わだよしおみ 若山憲/著 こぐま社/発行 1972年

『おおきなかぶ』
A.トルストイ/再話 内田莉莎子/訳 佐藤忠良/画 福音館書店/発行 初版1966年

『はらぺこあおむし』
エリック=カール/作 もりひさし/訳 偕成社/発行 初版1976年

『おふろだいすき』
松岡享子/作 林明子/絵 福音館書店/発行 1982年

『かいじゅうたちのいるところ』
モーリス・センダック/作 じんぐうてるお/訳 冨山房/発行 1975年

『三びきのやぎのがらがらどん』
マーシャ・ブラウン/絵 せたていじ/訳 福音館書店/発行 1965年

『だいくとおにろく』
松居直/再話 赤羽末吉/画 福音館書店/発行 初版1967年
 

 セレクトの基準を尋ねてみると、“昔からながく読み継がれているもの”という理由がひとつ。さらにこれらの良書の多くは、文章が簡潔で、絵を見ただけで内容や登場人物の心情がわかる、とのことです。
 大人が読んで聞かせることが基本となる未就学児には、このような本がぴったりだそうですよ。読み終わるまでにかかる時間やページ数など、お子さまのペースに合わせた絵本をぜひ、選んでみましょう!

 例えば赤ちゃん絵本のロングセラー『がたんごとんがたんごとん』は、絵も文章もとてもシンプル。ですが声に出して読んでみると、“がたんごとん”とリズミカルな音の繰り返しが耳に残ります。

 また、ロシアに伝わる民話『おおきなかぶ』は、日本でも多くのこどもたちに長年読み継がれてきた名作絵本。繰り返しの展開が分かりやすく、ダイナミックな絵を見ればなんとなく続きが想像できるのも良いですよね。

 あとは息の長い作品が多い絵本界の中でも比較的新しい、2005年に出版された『くっついた』。こちらも“くっついた”という言葉の繰り返しが赤ちゃんに愛される絵本で、親子でスキンシップをとりながら読むことができますよ。
 

『くっついた』三浦太郎/作・絵 こぐま社/発行 2005年

続いて小学校低学年に向けた10冊を紹介してもらいましょう。

(小学校低学年向け)
『ひとまねこざる』
H.A.レイ/文・絵 光吉夏弥/訳 岩波書店/発行 1983年

『時計つくりのジョニー』
エドワード・アーディゾーニ/作 あべきみこ/訳 こぐま社/発行 1998年

『これはのみのぴこ』
谷川俊太郎/作 和田誠/絵 サンリード/発行 1979年

『しずくのぼうけん』
マリア・テルリコフスカ/作 ボフダン・ブテンコ/絵 うちだりさこ/訳 福音館書店/発行 1969年

『ゆうやけにとけていく』
ザ・キャビンカンパニー/作 小学館/発行 2023年

『ふらいぱんじいさん』
神沢利子/作 堀内誠一/絵 あかね書房/発行 1969年

『エルマーのぼうけん』
ルース・スタイルス・ガネット/作 ルース・クリスマン・ガネット/絵 わたなべしげお/訳 福音館書店/発行 初版1963年

『ふたりはともだち』
アーノルド・ローベル/作 三木卓/訳 文化出版局/発行 1972年

『きえた犬のえ』
マージョリー・W・シャーマット/文 マーク・シモント/絵 光吉夏弥/訳 大日本図書/発行 初版1982年 新装版2014年

『吉四六さん』
寺村輝夫/文 ヒサクニヒコ/画 あかね書房/発行 1976年
 

 未就学児に向けた本と同様、ながく読み継がれてきた絵本と“幼年童話”を選んでもらいました。小学校低学年といえば、こどもによっては、読書の幅がぐっと広がってくる時期。そんなときにぴったりなジャンルが、『ふたりはともだち』や『きえた犬のえ』のような“幼年童話”と言われる低年齢向けの物語だそうです。“絵本から読み物への橋渡しをする本”というイメージでしょうか。

 谷川俊太郎氏による『これはのみのぴこ』は、ページを追うごとに言葉が積み重なり、最初は短かった文章がどんどん長い文章に。言葉の本という印象を強く感じるので、高学年のお子さまでも楽しめる絵本だと思います。

 続いては、大分で活躍する絵本作家ザ・キャビンカンパニーによる『ゆうやけにとけていく』。2023年に「第29回日本絵本賞大賞」に輝いた一冊で、登場人物のいろいろな感情が夕焼けによって優しく包み込まれていく様子は大人の心にも響く内容です。

 そして最後は大分では名の知れた民話の主人公・吉四六さんによるとんち話を収録した『吉四六さん』。内容のおもしろさはもちろん、この本をきっかけに大分への興味を持ってくれたらうれしく思います。著者は多くの代表作を持つ児童文学作家・寺村輝夫さんなので、そういった有名な方が吉四六さんについて執筆をしている、というところもポイントです。
 

いかがでしたか? お子さまの本選びに悩まれているママやパパは、ぜひこれらの本の中から参考にしてみてくださいね。

ママやパパが絵本を読んでくれた!  その幸せが小さな心を満たしていく

 読み聞かせと聞くと、ついそこから言葉を覚えてほしい、学びの機会になってほしい…。と願ってしまうことがありませんか? しかし、読み聞かせをする上で大切に考えてほしいのは、降り積もる知識ではなくこどもの心の満足感。大好きな家族の声を聞くことはこどもにとってとても心地良く、“ママやパパが読んでくれた”という幸せな記憶は年齢を重ねても思い出として残り続けるといいます。
 ですから、ぜひ「年齢を気にせずに、こどもからの“読んで!”という気持ちを大切にしてあげてください」といいます。本選びに困ったときは、こどもにとって身近な題材をテーマにした本を選んでみましょう。食べ物や乗り物など、親しみやすい題材だとこども自らが物語の主人公になり、感情移入がしやすいそうです。
 あとは、こどもが興味のあるキャラクターものでも大丈夫。例えば『おしりたんてい』が好きで別の絵本をお探しなら、探偵というキーワードを、切り口に新たな一冊を探してみても良いそうです。文章が長めの本を選んだ場合は、「今日は○ページまで読もうね」と約束をしても問題はありません。ママやパパが無理のない範囲で、親子の時間を過ごしてみてください
 

イベント

大分県立図書館では、さまざまなおはなし会を開催しています。開催の日時や参加方法はHPをご確認ください。

おはなし会
幼児や小学校低学年を対象にしたおはなし会。

赤ちゃんのためのおはなし会
わらべうたや赤ちゃん絵本の読み聞かせなど、親子で楽しむことができます。

1歳からのおはなし会
主に1~3歳が対象。絵本の読み聞かせはもちろん、わらべうたに手遊びなど、楽しいことがいっぱいです。

小学生のためのおはなし会
絵本などを使わず、耳で聞いて楽しむ“ストーリーテリング”という手法を使ったおはなし会。語り手の言葉により想像力が刺激され、物語の世界へ誘います。
 

おはなし会専用ルーム。おはなしの世界に入り込んでもらうため、シンプルで閉じられた空間になっています

レストランも魅力的!

 県立図書館には、レストランも併設しています。ふわふわのオムライスで知られる、人気の『Dish』のカフェが館内で営業中。個性豊かなオムライスに加え、洋食プレートやデザートまで豊富にそろいます。キッズ向けのメニューも好評で、写真は小学生まで注文できる「お子様オムライス」。

Dish 椿カフェ
営業時間 11:00〜18:00※土・日曜、祝日〜17:00
店休日 毎週月曜※月曜が休日と重なった場合は火曜、年末年始(12月28日〜1月4日)、資料整備期間
 

大分県立図書館

所在地 大分市王子西町14-1
電話 097-546-9972
開館時間 平日9:00〜20:00※土・日曜、祝日〜17:00
休館日 第1・3・5月曜※左記を含む月曜が休日と重なった場合は直後の平日、年末年始(12月28日〜1月4日)、資料整備期間