第2部では、企業において、従業員が業務と子育てを両立できる環境づくりに取り組むイクボス宣言企業「株式会社 大和電業社」と、大分県内で子育て中のお父さんが集まるパパサークル「おおいたパパくらぶ」、杉浦さんによる対談が行われました。

共育て時代の育児を考える。 性差を超えて家族の土台をつくろう

小野 それでは対談をスタートさせる前に、私からお2人について紹介をさせていただきます! まずは『株式会社 大和電業社』よりお越しいただいた、営業部長の丹羽宏成さん。大和電業社は1958年に設立され、現在の従業員数は62名。官公庁から民間まで手掛けたプロジェクトは多岐にわたりまして、工事や企画、提案、設計、メンテナンスまで一括した受注を強みとしています。さらに最近では高度な設計力・施工技術を生かし、石油コンビナートや排水処理施設をはじめとする施設の建設・設備の工事まで、産業界に不可欠な役割を果たすエンジニア事業も展開しています。丹波さんは現在おいくつですか?

丹波 僕は33歳で5歳と8歳の息子が2人います。

小野 ありがとうございます。そしてお隣が「おおいたパパくらぶ」の山口慎介さん。“おおいたパパくらぶ”は大分県の男性の子育て参画日本一を目指す取り組みから誕生したパパサークルでして、20〜50代までの幅広い年齢層のお父さんが家事育児の大切さや楽しさをパパ目線で伝える活動を続けています。山口さんの年齢は?

山口 僕は44歳で、子どもは小学校6年生の女の子と4年生の男の子。年長の女の子もいます。

小野 パパくらぶは現在何名くらいの方が在籍されていますか?

山口 今は73名ほどになります。おのおのに仕事がありますので、活動内容としてはみんながやりたいことをやるというか。絵本の読み聞かせやバルーン遊び、新聞遊び、親子防災遊び、パパクッキングなど、メンバーの趣味特技、やりたいことを生かした活動が多いです。それからパパ同士の情報共有の場としても機能しています。

杉浦 パパ同士、いろいろな特技をお持ちだと思うので、それを生かせる場があるのは良いですね。

小野 大分県では県を挙げてパパたちが育児に取り組みやすい環境を整えようと頑張っています。ですがまだまだ現状ですと、育休の取得率や家事育児の女性への偏りは大きいかなと。パパたちの間でその原因について話すことはありますか?

山口 職場環境の影響が大きいのかな、と思うところがあります。まだまだ就業時間が長く、結果的にママの負担が増えてしまうというのが現状。そういったところでは、パパ側から一歩を踏み出さないと環境を変えるのは難しいのかもしれません。

小野 パパが育児をしやすい環境にしていくためには会社の理解が不可欠だと。ですが大分県にも実際にそういった制度を整えている会社があります。大和電業社ではイクボス宣言をきっかけに、従業員の皆さんの育児や介護を応援すべくさまざまな制度を整えていると聞きます。そのきっかけは何だったのでしょうか。

杉浦さんの隣に少々緊張気味の、おおいたパパくらぶ代表・山口慎介さん

マルチタスク発想が身に付く  男性の育児参加は企業にとってもチャンス

丹羽 子育て世代が積極的に育児に関われば、仕事の効率も上がるだろうと考えたからです。残業や出張が家族からマイナスに捉えられてしまう職場ではなく、これからの時代は家族から気持ちよく「いってらっしゃい」と言ってもらえる会社であることが大切なのかなと。従業員が働きやすいだけではなく、奥さまからどう思われている企業なのか、そこを意識することでもう一歩先に行けるんじゃないか?と考えて改革を進めていきました。

小野 多くの人にとって働きやすい環境を整えることは、長く続く企業にとって大切なことですよね。具体的にどのような制度があるのですか?

丹羽 1時間単位の有休がありますね。こどもの突発的な病気は仕方がないですが、例えば緊急性のない歯医者などの検診は多くのお母さんお父さんが先延ばしにしているのではないでしょうか。早い時間帯に受診ができれば待ち時間も少なくて済むのに、仕事があるから混雑する17時以降でないと病院に行くことができない。行けたとしても、こどものスケジュールもどんどん下がっていく…みたいな。でも1時間単位の有休ならそういった事情にもフレキシブルに対応ができますからね。

杉浦 会社には女性の方もいらっしゃるんですね。

丹羽 そうなんです。何もかもがこども軸で進んでいく育児は、仕事とはまた別の大変さがあります。そこを保護者が自らの時間軸で有休を取得していく。そうすることにより、結果的に仕事の効率化にもつながっていくのではないかと思います。

小野 実際に有休や育休などの制度を利用された社員さんの声はいかがですか?

丹羽 僕が率先して休みを取るのですが、成果としては90%以上が育休を取得しています。残りの10%という数字は1人を指しています。ですがそのスタッフは赤ちゃんが生まれたばかり。現在は育休の取得時期を検討している段階です。奥さんが里帰りをされているようで、いつ休みを取得するのが1番の戦力なるのか考えているようです。

小野 山口さん、大分の企業も変わってきていますね。

山口 うれしいですね。実はパパくらぶでは“将来的に社会がこうなったらいいな”という一覧表をつくっていて、大分県のこども未来課さんに提出しています。パパとママ、会社の三者がそれぞれ意見を出し合う機会をもうけることができたら理想だなと。

杉浦 育休の取得率も、社会全体で上がってきていますよね。親になった直後の1番学ばなくてはいけない時期に仕事を優先してしまうと、将来的にパパが戦力になる可能性が少なくなってしまいます。ママが経験しているうちにパパも同じように子育ての経験を積んでいかないと、一緒の目線でこどものことを理解するのは難しい。あとは“育休”という言い方。休みじゃないですからね。そういう理解をもっと広めていかないと。

小野 山口さんは実際に活動を通じ、多くのパパたちの話を聞いてきたと思います。環境が変わりつつあるという実感はありますか?

山口 そうですね。男性の意識は確実に高くなってきていて、「育休をとった方が仕事上のメリットが大きかった」と話すメンバーがほとんどです。育休を利用することによって家庭のことが理解できるので、仕事の効率化を目指すようになった。今このタスクをこの時間内で終わらせなければ、帰宅後の家事育児に影響が出てしまうので順序良く仕事を終わらせることを考えるようになったそうです。結果的に職場のメリットにもなっていますよね。さらに同じ職場の女性が妊娠をした際、上司である男性が真っ先に声をかけてあげられる。異性であっても理解を示せる、ということはメンバーとの会話でよく出ます。

県内でも先進的にイクボス宣言に取り組む『大和電業社』営業部長の丹羽宏成さん

(vol.4に続きます)