いよいよ始まった赤ちゃんとの日々。けれど、思い描いていた産後の生活とは裏腹に、赤ちゃんとの暮らしは幸せながらも心配ごとが続きます。
 しかも産後間もないママの心身は、お産に伴う身体の疲労や睡眠不足、ホルモンバランスの影響を受けて落ち込みやすく、とても不安定な傾向に。
 そこで大分県内の各市町村では、助産師をはじめとする専門職が医療機関や助産所、自宅などで心身のケアや育児のサポートを行う産後ケア事業を県内34か所の医療機関や助産所等で実施しています
 

産後ケア事業のサービスの種類は3つ

(1)宿泊型(産婦人科や助産院にママと赤ちゃんが一緒に宿泊)
 (2)デイサービス型(ママと赤ちゃんが日中を産婦人科や小児科、助産院で過ごす日帰りタイプ)

(3)訪問型(利用者の自宅に助産師や保健師などが訪問)

 

 居住する地域により実施内容や赤ちゃんの対象月齢、申請にあたっての条件・注意事項が異なるため、検討の際は記事の最後のリンク先よりお住まいの市町村の窓口をご確認ください。 

ではさっそく、レポートへ! 

 今回は大分市府内町の『堀永産婦人科医院』にて、宿泊型の産後ケア事業についてお話を伺ってきました。
取材に協力していただいたのは、助産師・師長の渡邉しおりさんと副師長の大江洋美さん。

 まず、産後ケア事業の利用上限は、宿泊型とデイサービス型、訪問型を合わせて最大7回

 宿泊型では1泊2日(3食付)が1回のカウントとなり、利用は午前10時〜翌日午前10時までになるそうです。

 夜間にしっかり休みたい、夜間に子育ての手が足りない、赤ちゃんと2人きりで過ごす夜が不安…というママはきっと多いのではないでしょうか。
 

 1日の中で行われるケアメニューは、授乳相談・指導、乳房マッサージに沐浴(もくよく)や赤ちゃんとの過ごし方、ママ自身の健康管理や育児に関することを専門家に相談できます。自分自身の体がまだ完全に回復していない中、毎日頻回の授乳やオムツ替えに加え、時間を問わず何度も起こされたり、赤ちゃんの体調変化に慌てふためいて心配したり…。

 そんな日々を過ごすママにとって“頼れる助産師の方々がそばにいてくれる”という心強さ、さらに“滞在先が医療機関や助産所”という安心感は孤独な気持ちを和らげ、不安の解消に繋がるはずです。
 

 渡邉さんと大江さんは「(出産した医療機関での)入院の数日間だけではママへのケアが足りない。だから自分を責める必要は全くないのよ」と話し、来院したママとのコミュニケーションを大切にしていると語ります。会話の内容は子育てにまつわることはもちろん、家族の問題から仕事の悩み、宿泊当日のささいな出来ごとまでさまざま。まだふにゃふにゃで感情も読みとりづらい赤ちゃんのお世話を手探りでしているとき、言葉にできない自らの感情を口にできる相手がいること、それが実は一番の心の安定剤なのかもしれないですね。
 さらにお二人の言葉で心に残ったのは、「産後の不安や落ち込み、イライラはホルモンバランスが崩れているからだよ」という一言。笑顔でいられない自分を自分で責めてしまっているママにはぜひ、知ってほしい言葉だと思いました。

 また、大分県内の各市町村ではさまざまな医療機関や助産所と連携をとり、産後ケア事業に取り組んでいますが、堀永産婦人科医院では、まだ“産後ケア”という考えが広まっていない平成4年頃から独自のサポート体制を構築。ママたちへの支援の必要性をいち早く唱え、多くの母子を受け入れてきた実績があります。

 「ママと赤ちゃんの笑顔のためには、心と体を休めることがとても大切です。制度を利用してひと休みしましょう。ママ自身が育児に自身を持てるよう、わからないことは何でも聞いて(渡邉)」。
 

 そして取材時にお会いした利用者ママにもお話を聞けることに。

 この日は2度目の利用になるとのこと。秋に双子の男の子を出産するも、さまざまな事情から家族のサポートを得ることが難しく、住んでいる地域の保健師さんの勧めもあって産後ケア事業の利用を決めたそう。

 産後ケア事業を利用する前は、授乳による寝不足も重なり、同時泣きのときは抱っこする手が足りずに悩むなど、不安が尽きなかったと話します。けれど産後ケア事業で気持ちを吐き出し、気になったことは都度相談しながら過ごす中で少しずつ心が前向きに。 

 「自宅では2人のお世話だけでとにかく精いっぱい。自分の食事やお風呂、水分補給さえままならない状態でした。だけどこちらに宿泊することで、久しぶりにまとまった睡眠をとることもできて精神的に落ち着きました」。
 

 そう。産後ケア事業では、日常の赤ちゃんとの過ごし方や育児のコツ、疑問の相談はもちろん、ママの休息も大切な目的の一つ。

 だから、“赤ちゃんを預けてゆっくり休みたい”という本音をここでは話しても大丈夫ですよ。

 ママの体調や精神面を見ながら、一人ひとりに合った産後ケア事業を提供しています。ですから1人では悩まないでくださいね

利用にあたって

 利用にあたってはお住まいの市町村に申請が必要になります。承認が下りるまでにはおおよそ2週間ほどの日数を要しますので、スケジュールに余裕を持って申し込んでください。
また、準備物は実施施設ごとに異なるため、予約時に施設にご確認をお願いします。
 

※赤ちゃんの対象月齢や利用条件、予約方法、利用方法の手順は市町村ごとに異なるため、以下よりお住まいの地域の窓口へご確認ください。

※利用の適否については審査があり、母子のどちらかに入院や治療等の医療行為の必要がある場合は利用ができません。その他条件もHPをご確認ください。
※利用回数に制限があり、1人あたり最大7回まで利用可能となっています。
 

◎取材施設 

堀永産婦人科医院
大分市府内町2-5-13