育児と家事は別もの!? 2つを切り離すと見えることがある
小野 パパが育児に取り組むためには、何から始めるのがよいでしょうか。
杉浦 育児と家事が違う、ということを理解することからではないでしょうか? 育児ってこどもが今何に関心や興味を持っているのか?というところから考えていく。そう考えると、大人との共通項が結構あると思っていて。「その気持ち俺もわかる」「パパもちょっと知りたいな…」というふうにこどもと同じ趣味を持てる可能性があります。例えば大分には海がありますから、パパとこどもが一緒に釣りに行く。ママはフリータイムになるわけでしょう。いいことしかないじゃないですか。パパも大好きな釣りができて、しかもこどもと一緒に楽しい時間を共有できる。そういう意識から入ってもよいのかもしれません。
丹羽 確かに家事と育児は違いますね…! 今気がつきました。育児だけで捉えるとただただ楽しい。先日も息子2人とスノーボードに行きましたが、僕の趣味に付き合ってくれただけで(笑)。僕はすごく楽しかったですね。
杉浦 こどもの成長も実感できますしね。
丹羽 そうですね。親になると自分のこどもの成長が、大谷翔平選手がホームランを打つことと変わらないくらいの感動になる瞬間がありませんか? どんなに小さな成長でも、親はこどものファンになっちゃうんですよ。
杉浦 秒でなりますね! しかも大ファン(笑)。
小野 確かに家事育児をセットとして捉えてしまうと、パパはそれだけで自分にはできないと考えてしまいがち。でも育児なら関われることはたくさんありますよね。
杉浦 家事が苦手なお父さんは奥さまのルールを崩さないことが大切。柔軟剤の量とか、洗濯物の畳み方とか。その辺りのルールを把握した上で手伝っていかないといけない。いや、手伝うという概念はむしろ捨てないといけないですよね。だって同じ家のことですから。2人でやろうという意識に変えていかないと。
山口 僕らよりも会場のお母さんたちのうなずきがすごい(笑)。でも僕も同じ考えです。家では僕よりも、奥さんが上司だと思っています。“教えてもらう”というスタンスでいくとうまくいくような気がします。それでも衝突してしまうときはわが家の場合、奥さんは「こどもと出掛けてくれるだけで良いから」と言ってくれますね。奥さんたちは誰にも邪魔をされない、1人の時間を欲している方が多いと思うので。
小野 丹羽さんに教えていただきたいのが、社員の皆さんの間のジェネレーションギャップについて。40代後半以上の方は“男は仕事”という価値観が当たり前の時代で働いてきたと思うのですが、現在のような時代の流れに納得できているのでしょうか。
丹羽 理解しづらいところも細かい部分ではあったかと思います。ですが弊社の場合は“ただ休みを増やす”というアプローチではなく、“今後も会社が持続していくための環境を整えていこう”という考えから改革がスタートしています。技術者が多くいる会社なので、これまでの歩みの中で業務の属人化がかなり進んでいる状況でした。だけど、もしもその人が仕事を辞めてしまったら?病気になってしまったら?というリスクを考えると、そもそも仕事を分散させていることがとても重要です。ですから、育児に向けての変化というよりも、そもそも今の仕事の進め方ってどうなの?上の人が休める状況をつくらないと…という問いかけをスタッフにはしていきました。
杉浦 この仕事はこの人しかできない、ではなく、みんなでフォローをするって大切ですね。
丹羽 あとは今強化をしているのがDX化。人がすること、しなくても良いことの分別をしっかりとつけていくことが大切だと思います。
杉浦 それぞれの家庭の事情があるだろうから、個人事業主の人や飲食店の人は必ずしも同じ方向に進むことはできないかもしれません。だけど、どんなに綺麗事と言われようが、まずは発言をしないと汚れた土壌はきれいにはなりません。発信することが大切だと思いますね。
小野 パパくらぶの今後についてはどうですか?
山口 今以上にもっと気軽に入会でき、相談してもらえるような環境を整えられたらと思っています。メンバーの中には60歳近いパパもいますし、お子さんのいない若いご夫婦で“前もって知識が欲しい”という方も。
小野 杉浦さん、大分のパパたちの活動はいかがだったでしょうか?
杉浦 子育てに積極的な方、企業も多くて驚きました! 長女が生まれた18年前とは全然違います。プラスの方向に動いているなと感じるので、これからもその流れをどんどん取り込んでいけたら良いですね。
小野 さて。ここで質問タイムを設けましょう! では7カ月の娘さんのいるパパさんから。外出時に娘さんの機嫌が悪くなってしまった際、つい月齢に応じたYouTubeなどに頼りがちだと。みなさんのご家庭にはルールはありますか?ということなのですが。
杉浦 僕らのときはアプリというツールもなかったので、親が体を使ってあやして…という感じでしたよね。でも普段からパパでもママでも寝かしつけができるように、なるべく3人で寝るようにした方が良いと思います。そうするとママが体調不良のとき、パパが代わることができるので。これが無理だとママが風邪をひいてしまったときに戦力になれないです。赤ちゃんってパパの匂いに慣れていないと泣くんです。親子で過ごす温かさや匂い、空気を赤ちゃんはすでに知っています。
山口 生後3カ月もしたら赤ちゃんは外出もできますから。わが家の場合は、奥さんの授乳が終わったら僕とバトンタッチ。「はい貸して!」と妻に伝えて、抱っこひもで数時間こどもと一緒に外を歩いていました。赤ちゃんってパパの匂いと心音を覚えるんです。そうするとママがつらいときにパパが助けることができます。うちは妻が乳腺炎によくかかっていて、高熱で本当に苦しそうで。そんなときにパパがこどもを外に連れ出し、ミルクを飲ませるとかですね。夫婦間でいつでも子守チェンジできる環境は大切だと思います。
丹羽 大人だって怒ることがありますよね。それがこどもにとっての“ぐずる”という行為だとしたら、それは特別なことではなくて普通のこと。だから僕はそこに対して無理になんとかしようとかはありません。そういうときもあるよね、と受け止めるようにしています。外出先だと必ずしもそうはいかないこともありますけど、自分に置き換えてまずは考えてみる。そして僕も時々ぐずる(笑)。パパも知らないよ、怒っちゃうよって(笑)。そうすると息子がキョトンとして意外に機嫌が戻ったり。
杉浦 確かに“ぐずる”っていうのは赤ちゃんなりの意思表示。親としては忍耐が必要ですけど、一生グズグズする子はいません。だから今は少し耐える、向き合うということが大切ですね。
最後は杉浦さんによるサイン入り色紙の抽選会が行われ、惜しまれながらもイベントは終了。その後も会場には熱気が残り、室内に用意されたチャレンジコーナーでは閉会時刻まで大道芸に挑戦する多くの親子の姿が見られました。